こんばんは!
続きです!
前回はこちら。
taoyakagirl.hatenadiary.jp
次にフォーカスがあてられていたのは、トーマス・エドワード・ロレンス。
映画にもなった砂漠の英雄「アラビアのロレンス」
新たなエネルギーである石油を狙ったイギリスの情報将校としてアラブ社会に食い込んみました。そして、今に至る中東紛争のきっかけを作ったのは、彼の裏切り。
どうしてこうなってしまったのかというと、
当時イギリスは密かな戦術に新たな活路を求めていました。
謀略戦です。
1916年、イギリスはドイツの同盟国のオスマン帝国を狙って破壊工作を仕掛けます。その作戦から砂漠の英雄の伝説が誕生することとなるのです。
オスマン帝国はドイツと同盟を結んで第一次世界大戦に参戦していました。
600年の歴史を持ち、ヨーロッパからアジアにかけて広大な領土を持つオスマン帝国。しかし、度重なる戦争で衰退し「瀕死の病人」と呼ばれていました。
オスマン帝国の地図を今の地図と重ねてみると、ほぼ今の中東全域に及んでいました。
当時、オスマン帝国の人口は1800万人。トルコ人とアラブ人が7割を占め、クルド人・ユダヤ人・少数民族も暮らす多民族国家を形成していました。
イギリスはアラブ民族の独立運動に目をつけたのです。
その動きを焚きつけて内部からオスマン帝国を倒そうとします。
狙いはオスマン帝国で次々と見つかる大規模な油田でした。
イギリスはアラブの有力者と密かに接触します。
預言者ムハンマドの血を引くフセイン、そしてその御曹司であるファイサルです。
その任務にあたったのがトーマス・エドワード・ローレンス。
ファイサルに武器と資金を提供し、オスマン帝国打倒を持ち掛けました。
イギリス人でありながらアラブ文化への理解が深く、言葉も自在に操るロレンスにファイサルは大きな信頼を置くことになります。
イギリスはファイサルにオスマン帝国を倒した暁にはアラブの独立国を作ると約束しました。約束を信じたファイサルは反乱軍を組織します。
「オスマン帝国に勝利するためにはアラブ人の情熱が絶対に必要だった。だから私はイギリスは絶対に約束を守ると断言した。私の言葉はアラブ人を勇気づけた」(ロレンス「知恵の七柱」より)
アラブの反乱軍は巧みなゲリラ戦法でオスマン軍に打撃を与えました。
ロレンスの名を世界に轟かせるきっかけをつくった人物がいました。アメリカの映画プロデューサーのローウェル・トーマス。
連合軍から依頼されプロパガンダ映像の製作を請け負っていたトーマスは撮影中にロレンスと出会います。
「アラブ服を着たロレンスに偶然出会ったとき、ピンときましたね。この男は並はずれた魅力をもっている」(トーマス)
ロンドンのロイヤル・オペラハウス。
トーマスはロレンスを砂漠の英雄に仕立て冒険物語を作り上げました。この日行われたトークショーでトーマス自身が映像の語り手を務め、ロレンスの冒険活劇を語ります。
「オスマン帝国の圧政に苦しむアラブ人を助けた英国のロレンス。アラブの名門ハーシム家の御曹司ファイサル。隣に控えるのがアラビアの無冠の帝王ロレンスであります」(トーマス)
エキゾチックな映像とトーマスの巧みな語り口が大反響を呼び、ロレンスは一躍世界的なヒーローとなります。その後、イギリスの大作映画にもなりました(映画「アラビアのロレンス」1962年)。
しかしロレンスはアラブの民からみれば裏切りの英雄でしかありません。実はイギリスはアラブ建国を約束する裏でフランスと密約を交わし、戦後オスマン帝国を分け合うことを企てていました。
勿論その交渉はアラブ人には一切秘密です。
しかもイギリスはあろうことか、この地にユダヤ人にも国を作る約束をしていました。ロレンスはイギリスの真の目的を隠しながらアラブを助けていたのです。
イギリスが乱発したこの欺瞞に満ちた約束は、今に至る悲劇の出発点となるのです。
そして、1918年10月、ドイツの同盟国オスマン帝国が降伏します。
最大の軍事拠点ダマスカスが遂に陥落。
アラブの反乱軍がダマスカスにファイサルが入城したとき、イギリスのロレンスを伴っており、ファイサルはアラブ民族の独立を宣言しました。
「ファイサルが入城した時、ダマスカスの興奮は最高潮に達した。アラブ人が長年夢見てきた自由が遂に実現したように思えた」(アラブの歴史家ジョージ・アントニウス「アラブの目覚め」より)
協力の見返りに独立を約束していたイギリス。
しかしイギリスのアレンビー将軍はファイサルにその約束を果たせないことを初めて直に伝えます。
「二人の通訳をしたのは私であった。ファイサルが帰ったあと私はアレンビー将軍に申し出た。『もうこの仕事から身を引きたい』。私の心はもはや萎えていた」(ロレンス)
大戦が終わるとアラブへの攻撃が始まります。
大戦中には同じ陣営にいたフランスによる容赦ない空爆によりアラブの独立は幻に終わわりました。ファイサルは連合国から利用された末に見捨てられました。。。
アラブ人に更なる裏切りが待っていました。
だがイギリスは大戦中この地にユダヤ人の国を作ることを約束していました。
ロシアでの大量虐殺から逃れてくる人々など世界中からユダヤ人がパレスチナを目指した。
アラブ人が一度は独立を夢見た土地にユダヤ人が根を下ろす。
21世紀の今も続く憎悪の連鎖。
ここから始まりました。
これが、ロレンスにちなむ中東をめぐるお話です。
イギリスの中東を巡る話は、かばいようがありません。。。
今も中東情勢が落ち着かないのはやはりここに原因があると思います。
今、どうすればいいのか。
簡単に答えは出せませんが、どの民族の人もどの宗教の人も穏やかに過ごせる地域になってほしいです。
第1集のお話はまだ続きます!
おしまい!!